コピーソフトの歴史

コピーソフトの問題は歴史が長く、日本では1970年代後半から1980年代の8ビットパソコンの時代(特に8ビット御三家全盛期)より、ソフトウェアの不正なコピーを行うケースが見られた。コピーソフトの背景としては、当時の8ビットパソコンは家庭用ゲーム機に比べ所持する年齢層が高いこともあり、「マニア」と呼ばれる技術分野に関心度の高いユーザーの占める比率が高かったことや、パソコンそれ自身で開発環境も併せ持つことからリバースエンジニアリングが比較的容易であったことなどが考えられる。

また、当時はソフトウェア媒体をレンタルする「レンタルソフト屋」なる商売も存在しており、さらにはコピーツールのような違法コピーを幇助するソフトウェアを同一の店頭で販売するような状況であり、総じて著作権侵害に関する意識は低かった。また、コピーソフトの取締りを行なう業界団体も、当時はまだ存在していなかった。

コピーソフトのプロテクトに関しては、この当時のソフトウェア媒体が書き込みに特別な装置を必要としないフロッピーディスクやカセットテープといったものに依存しており、カセットテープで供給されていたソフトでは、基本的には音楽再生用(家電)のカセットデッキでのダビングを行なうことで、簡単に複製(コピーソフト)が可能であった。

フロッピーディスクのソフトでは、一部に特殊なフォーマットを施しておき、そこが再現されているかどうかをチェックしていた。しかし当初は、このプロテクト措置もソフトウェア上で工夫すれば簡単に再現できるようなものが多く、更にはこれを実現するための「コピーツール(パックアップツール)」と呼ばれるソフトが出回るようになった。それにつれ、ソフトウェアの側では段々とパソコン本体だけでは再現できないフォーマットを用いるようになり、コピーツールの側も再現するための拡張ハードを用意するなど、さながらイタチごっこの様相を呈するようになる。

最終的にコピーツール側は、ファイラーと呼ばれる、ディスクを書き換えてプロテクトをチェックするコードを外すためのパッチ集に落ち着いた。対してプロテクトを掛ける側は、プログラムコードの暗号化や、プロテクトが外れていなくても一見正常動作しているように見せる「後チェック」、特殊な装置(ドングル)を本体に付けさせるハードプロテクト、説明書や付属品にある情報を入力しないとインストールなどで先に進めなくするマニュアルプロテクトなどで対抗したが、どれも効果は薄く、ソフトが発売されて一ヶ月以内にはパッチが出回っているという状態であった。

この当時、ライセンスという考え方はまだ浸透していなかった。ソフトウェアのコピーは、人の集まる学校のサークルなどで行われ、またコピーを商売とした「コピー屋」も存在した。個人でのコピーは、破損に対する備えの「バックアップ用途」、サークルでは「共同購入」という大義名分が存在したが、それを商売にすることは明らかな著作権侵害で、実際に警察に摘発されたコピー屋も存在する。ソフトの貸し出しを商売にする「レンタル屋」についても、著作権侵害の追及の手が入った。しかしコピーツール自体は取り締まられず、摘発してもあまり効果はなかった。またアマチュアの作ったコピーツールを積極的に公開する雑誌も存在した。

ロイヤルティこそないものの、市場規模の小さいパソコンの分野においては、コピーツールの存在がソフトの設定価格にも響くことになった。主に小遣いの少ない学生がコピーソフトを入手して周囲にばらまき、それが結果的にソフトウェアの売上本数の伸びを妨げ、供給価格が下がらない(または高くなる)、という悪循環が生じていた。

またこの当時では、ゲームソフトを厳密かつ公平に評価するメディアも少なかったために、新作ソフトの出来がいいかどうかは「購入するまで判らない」、という事情もあった。一部のユーザーからは「ソフトの価格が高すぎる」「高いからコピーが流行る」という反論混じりの非難も起きた。8ビット末期、新作ソフトがフロッピー3〜5枚で定価が5,000円〜15,000円(大抵は1万円弱で、大作では簡単に1万円を超えた)程度であったのに対して、新品の2D・5.25インチフロッピーディスクが、ノーブランドと呼ばれる粗悪品であれば10枚100円程度で入手できた事も、マニアをソフトウェアのコピーに走らせた要因に挙げられよう。

8ビット時代のこれらの苦い経験が、16/32ビット時代になってからの著作権法の改正や社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 (ACCS) の設立、有力ソフトハウスのコンシューマ機への移行、パソコンでの(開発費が少なくて売り上げが大きい)アダルトゲームの増加などに繋がっていった。また、新機種で発売されるメディアのCD-ROM化にも影響を与えた。

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